4月号|公暁を探る

 

頼朝の孫・公暁を探る


伊豆国へ流刑された頼朝は、20年の時を経て坂東武者を結集し挙兵、1192年征夷大将軍となり鎌倉幕府を開く。しかしながら1199年51歳で死去。その後、息子の頼家が後を継ぐが、母親の北条政子の一族である北条家と対立し1204年伊豆国・修禅寺にて北条氏の手によって殺害される。(墓は修善寺温泉・源氏公園内の指月殿隣にある)頼家死後三代将軍を継いだのは頼家の弟の実朝。しかしながら頼家には実は息子がいた。それが公暁である。公暁にしてみたら本来なら自分が座るべき将軍の座にいる実朝が許せない。(父頼家を北条氏と謀り暗殺したと吹き込まれたか操られたか…)そして1219年、しんしんと雪降る鶴岡八幡宮。鳩が鳴きさえずる中、『親の仇はかく討つぞ』と公暁は実朝を殺してしまう。頼朝の頃は吉兆とされていた鳩だが、頼朝死後は不吉の前ぶれとされていたという。
公暁はその日のうちに打ち取られ将軍になることはなかった。これにより、みなもとーいわゆる源氏の将軍は絶え、鎌倉幕府は北条家の執権政治がさらに強まる。こう見ると実朝の死によって得をしたのは北条家。となると仕組んだのは北条家ということになるが、北条家に取って代わろうとしていた三浦家が公暁を操ったという説もある。歴史事実は小説よりも奇なり。諸説あるが残っている資料は権力側の北条家寄りのものばかりで、死んでしまった実朝、公暁の気持ちを伝える声は消されてしまっている。真実は闇の中である。と思いきや、実は沼津・大泉寺にその声が残っているらしい。この寺は、阿野全成、時元親子の墓があることで有名なのだが。あのぜんじょう…頼朝の弟であり義経の兄である。全成もまた、鎌倉幕府がはじまったころ権力争いで殺されてしまっている。この大泉寺には、さらになんと公暁の御位牌が祀られている。ひょっとしたら公暁は沼津・伊豆の地と何らかの関わりがあったのかもしれない。それこそが歴史のなぞでありミステリーと言えるところだ。事実はわからないが想像することは自由である。
公暁は善哉(ぜんざい)と呼ばれていた幼少期京都の円城寺(三井寺)で公胤(こういん)のもとで修業している(そこから公暁と名乗ったようだ)。だが祖母の北条政子の命で1217年鎌倉・冨岡八幡宮に戻り別当に補任され、それから2年後に、公暁は実朝を殺すことになる。京から鎌倉への移動の途中、祖父・頼朝のゆかりの地である伊豆国を訪れ、祖父の弟の阿野全成ゆかりの沼津に立ち寄ったとしても不思議ではない。そこで彼が実朝にかわり源氏の将軍となる決意を固めた!?なんとんも三文芝居的筋書きだ。
そのころ公暁16歳。源氏、北条政子、執権北条義時、乳母夫(めのとぶ)三浦義村と幕府の中枢にいたそれら大人たちの権力争いの道具として使われていることに抗い、このままでは終わらん!北条家何者ぞ、源氏正統者の想い今こそ見せてやると、若き力をたぎらせ究極の一手に出たとしたら…。
我々の生きる現代の世界でも各地で戦争が起き、分断、利権争いなどが起きる中、どれだけの若者がその犠牲となっていることであろうか。ひょっとしたら今日死ぬかもしれない。そんな生死の境を生きている若者たちが決して自らの人生にあきらめることなく、逃げることなく、この世界を自分たちの手で未来を変える。そのための『究極の一手』に出ることを誰が責めることができようか?公暁の生きざまを知ることで、想像することで、今の若者たちの希望となりえるドラマを描くことができたらそれもまた一興である。

 

 

修善寺温泉・修禅寺と源氏


古藤田の菩提寺である修禅寺。あまりに近い存在だからだろうか調べたことがなかったのでググってみた。正式名称は、福地山修禅萬安禅寺(ふくちざんしゅぜんばんなんぜんじ)。修善寺温泉発祥の寺で温泉場の中心にあり、平安時代初期の大同2年(807)弘法大師の開基と伝わっている。さらに修禅寺は源氏ゆかりの寺、それも悲劇の舞台として知られている。建久5年(1194)源範頼は、兄で鎌倉幕府将軍・源頼朝の猜疑を受け修禅寺の子院「信功院」に幽居させられ、梶原景時に攻められて自刃したといわれている。また、頼朝の長子で2代将軍頼家は、母・政子と祖父・北条時政の謀略によりここに幽閉され、元久元年(1204)暗殺されている。さらに修禅寺の宝物殿には『公暁の血書阿弥陀経』なるものがあるという。このお話を沼津・大泉寺での公暁の法要時に聞いたので修禅寺を訪ねてみた。実は宝物殿に入館するのも今回が始めてとなる。
深閑とした空気観に包まれ館内に入ると。数々の源氏にまつわる寺宝を拝見することができた。その中に『頼家公の長男公暁が 父の冥福を祈って書写したもの』と説明書きが添えられ『公暁の血書阿弥陀経』が展示されている。この機会に、修禅寺~頼家の墓~指月殿などめぐってみようと思っている。

 

コトウダグループ(古藤田グループ)