11月号|変態が改革する多様性社会 

 

立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明氏の講演録を読んで


人間の脳は、世の中を客観的に見るようにはできていません。人は皆、『色眼鏡』を掛けているから。では『色眼鏡』とは何か?それは、それぞれの人生観や価値観のこと。「人間は見たいものしか見ない」と喝破したのは2000年前のユリウス・カエサル。すなわち、世の中をきちんと見るためには、方法論がいるのです。その一つが『タテ・ヨコ・算数(エビデンスベース)』です。タテ思考とは、「昔の人はどう考えたか」ということ。昔の人の考えを学ぶこと、歴史をひもとくことはとても参考になるのです。ヨコ思考とは、自分以外の他人の意見、つまり世界中の人の意見を参考にするということ。そして算数。エビデンスに基づく志向が必要ということ。一つや二つのエピソードで議論するのではなく、データに基づいて分析することが肝要です。日本はこの30年間、年間2000時間以上働いてるにもかかわらず、GDP(国内総生産)は91年の約9%をピークに直近は4.1%と半分以下になっている。国際競争力は、30年前は世界1位だったのに今は30位。もっと分かりやすい例を示すと89年の世界トップ企業20社中14社が日本企業だったのに現在はゼロ。日本の30年間はマネジメントがなっていない、経営力がない、ゆえに新しい産業を生み出すことが出来なかった。これがデータに基づく答えです。では、新しい産業を生み出すカギは何か。世界中の学者がGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)を研究しての答えのキーワードは三つ。『女性』『ダイバシティ』『勉強』。全世界のデータで見てみるとサービス産業のユーザーの7割は女性。ということは経済、消費を牽引している女性の欲しいモノ、求めているモノを市場に送り出さなければならない。しかしながら女性の地位が先進国の中でもずばぬけて低い今の日本にその力はない。昨年、ラクビーワールドカップで日本のる『ONE TEAM』はベスト8に入りました。なぜ結果が残せたのかといえば外国人と日本人の混成により、世界で闘える強いチームづくりが出来たからです。これが全て。目的が一つなら、言葉や文化を超えて『ONE TEAM』となることが証明されたのです。未だに偏見と差別、ダイバシティが乏しい日本の未来は極めて不透明です。日本の社会は、偏差値がそこそこ高く、素直で我慢強く、協調性があり、上司の言うことをよく聞く人を『できる子』として育ててきました。この若者たちに新しいアイディアを出せ、イノベーションを起こせと迫っても恐らく何も出てきません。いわばスティーブ・ジョブズのような変態的な人、好きなことを徹底的にやる人が必要なんです。もちろん、変態ばかりでは世の中は回りません。日本企業が好んできた『できる子・出来る人』も6割は必要。でもせめて1~2割ぐらい変態をつくらなければ新しいアイディアは生まれません。

 

 

美味しい人生には、「人・本・旅」が必要です


これからの社会に必要なのは「人・本・旅」の社会です。これまでの日本の悪慣習からの脱皮です。進化です。具体的には、自分の人生の時間をもっと自分のために活かす社会です。アフターファイブ、休日には、会社以外の人たちと会って、いろいろな刺激を与え合う。たくさんの本を読む。旅といっても海外旅行ということではなく、身近な街歩き、話題のスポット巡り、話題のパン屋があれば寄ってみる。行って買って食べる。足を使って、多様な広い世界を体験することによって、脳に刺激を与え、視野を広げる暮らし方をするのです。おいしい料理を作るには、厳選したこだわりの食材集めと調理方法がポイントです。「あ~美味しいこれ!」と自分も納得する料理は、あなたの大切な人にも伝わります。必ず美味しいと言ってくれます。『おいしい人生』も同じです。あなたらしい素材と生き方が、かみ合えば必ず自分自身が納得できる人生をつくれます。そんな生き方をしている君は、あなたの大切な人からも周りの人からも、とても魅力的に映るはずです。明るい未来がそこにありますよ!

 

コトウダグループ(古藤田グループ)