7月号|あらためて「人・本・旅」

 

再登場・立命館アジア太平洋大学・APU学長
出口治明氏の講演録を参考に


私は料理をするのが好きだ。週末の夕食は家族の分も含め私がつくることが多い。料理本もレシピもほぼ見ない。まず、冷蔵庫の中身、その他残り野菜や調味料の有無など確認してメニューを決め、買い物メモをつくり、スーパーへ。調理の前に頭の中でイメージを固めて『いざ!』。材料の刻み、下ごしらえ…イメージ通りの味に仕上がれば出来上がり。家族が美味しい美味しいと食べる姿を眺めながら自分がつくった料理に舌鼓。料理とは私にとってのイノベーション・トレーニング。出口氏は云う。自分の頭で考える力がいかに大事か!自分の言葉で社会常識を超えてゼロから物事を考え出す力。その力が圧倒的に劣るのが今の日本人。イノベーションは、既存値と既存値の化学反応。間が遠ければ遠いほど『爆発的反応』が起こる可能性は高くなる。これがダイバーシティだと。私はつくづく思う。地球人類、この世界のことなどほとんど知らないことだらけ。ちっぽけで狭くて、ワンパターンでマンネリ化した日々の暮らし、生活・仕事の中にどれほどの刺激材が存在するのであろうか?そこには期待できるほどのものはない。そこで出口氏のタテ・ヨコ思考の重要性そして数字、ファクト、ロジックで今を、そして未来を考える。につながる。人類の進化、日本の歴史、文明の起源、世界の歴史…人間の脳は1000年以上進化してないのだから、例えば織田信長の思考、行動は現在でも少なからず参考になることはある。これがタテ。そして世界は広い、いま自分の知らない世界…狭く見れば仕事で関わったことのない産業界で起きている事、広く見れば、地球上のあらゆるところで起きている今を知ることは自分が存在する社会の課題解決に役に立つであろう。これがヨコ。日清食品創業者の安藤百福氏の創造的思考にも同様の事がしるされているが、要は視点を変え、視野を広げ、統計的な数字や経済的な指標などの数字そして現実に起きているファクトを独自のロジックでつなげ合わせそれを発信するといった勉強、考えることを怠るとこの時代を生き抜くことはできないとの警鐘。最初に取り上げた料理の話は、タテ・ヨコ思考そして数字、ファクト、ロジックを理解する上で、そこに当てはめてみると「あ~そういうことね」と目からウロコ的な気づきにつながる…私はつながった。では、具体的には、ということになると、MKニュースの11月号にも取り上げたが『人・本・旅』の実践ということになる。知らない人と出会い話をする機会をつくろう!歴史や文化やジャンルは問わずいろんな本を読もう!知らない町を歩こう!そうして脳に刺激を与え、感じたり、考えたりしよう。机にかじりついての勉強とは違う、今までとは違う自分に出会う一歩を踏み出そう。意識が変われば考えが変わり、行動が変わる、そして毎日の習慣が変わる。最も大事なことは、自分にとって興味のある、楽しい時間の過ごし方として『人・本・旅』がつながれば、未来への扉はきっと開かれる。

 

 

日本人が忘れはじめていること


先日、天城湯ヶ島にある『アルカナイズ』に宿泊する機会を得た。ここは、ほとんど人工音が聞こえない。部屋の窓を開ければ川のせせらぎと鳥のさえずり、木々を揺らす風の声。環境音に余計な音はすべて溶け込む。食事処からは外向きのカウンター。目の前はパノラマガラス。ライトアップされた中庭、その中央に大きな自然木が映し出される。「この木はなんの木ですか?」と尋ねる。この木は『樹齢200年の楠』で、ここアルカナイズのシンボルツリーだとスタッフが教えてくれる。そもそも日本人のこころの中には、観音様が住んでいて、このような木を神宿るものと讃え大切にするよう導いてくれた。そう夏川草介氏著『始まりの木』のなかでも語られている。アルカナイズは、日本人が忘れはじめている大切な心を『感じさせ』そして『思い出させてくれる』気づきの空間。あ~もっと日本人らしくいきたいものだ。自然を慈しんだり、他人を尊敬したりする心の在り方をあらためて『感じる日常』を意識して送ろう。乾いた心に朝一杯の水をそそぎ「今日もいい日だ!」と自分に声をかけよう。

 

コトウダグループ(古藤田グループ)