自給自足、代替え、物ぶつ交換…生きていくための知恵
最近のニュースといえば、ロシア・ウクライナの戦況から始まり、食糧問題、値上げ、品不足、そして今日のコロナで終わる。番組表を眺めると、SDGsやカーボンニュートラル、フードロスを題材にした番組も多くみられるようになった。世界中でこれから先、起こり得るだろう『良くないこと』への『不安』と、それでも自分たちは生きていかなければならい、そのための『備え』について、気づきの機会を与えているのであろうか。希望を胸に生きることが肝要だ。
先月5月22日~26日、2022ダボス世界経済フォーラムが開催されている。フォーラムの中で、天才投資家で知られているジョージ・ソロス氏は、そのスピーチの中でウクライナへの侵攻は、晴天の霹靂というわけではない。世界は、「開かれた社会(open society) と閉ざされた社会(closed society)という正反対の2つの統治システムの間で、ますます対立を深めている。その違いとは、簡潔に定義づけするなら、「開かれた社会」では、国家の役割は個人の自由を守ること。「閉ざされた社会」では、個人の役割は国家の支配者に仕えること。そして新型コロナウイルスのパンデミック や気候変動との闘い、核戦争の回避など人類全体が抱える多くの問題は、後回しにされ、争いごとは絶えず、ゆえに私たちの文明は存続できないかもしれないと述べている。開かれた社会、閉ざされた社会について想いを巡らすと、こういった社会は世界国家レベルだけに存在するものではなく、大なり小なりこの日本社会のあらゆるところにも存在し、かつ世界中の『人間の心の中』にも存在していることに気づかされる。
先日、あるファミリーレストランで『代替え』をテーマにメニュー開発に乗り出している記事を読んだ。別に新しい考え方ではないが、これまではヘルシーで体に良いものということで紹介されていたメニューも、値が上がり、品が不足し、調達しにくくなった食材の代わりを!ということで注目されているというわけだ。肉の代わりに大豆を、パンの代わりに山芋やサツマイモといったイモ類を…気づけば江戸の昔の日本食の知恵であったり、戦時中や戦後の食糧難を乗り切った料理や食し方がそこにある。給食で『おから』を使ったメニュー開発の番組もあった。ほとんどが家畜のエサ、使いきれなければ当然廃棄。フードロス、もったいない、調理次第で美味しく頂けるをテーマに高校生がおからを使った味噌づくりにチャレンジ、みそ汁ほか味噌を使った料理を次々に開発し、給食に出していく。こういった試みは食育、学び、健康、食文化承継とあらゆることにつながり、役に立つもの。『自給自足』、捨てるなら引き取る、手を加えたモノを戻すといった『物ぶつ交換、代替え』とすべてに関連付けることが出来るこのような考え方は、衣・食・住すべての暮らしの中で活かすことができる、まさに『生活の知恵』なのだ。本当に困ってからでは手遅れ、『備えよ常に』である。
用の美と心の豊かさ
陶器や磁器といったものは、高価で一般庶民には手の届かない代物。高級料亭の懐石料理、茶会に使用される特別な器だと思っていたがそれだけでもないらしい。著名な陶芸家の中には、日常食卓に並び、生活用品として使われている『器』が一番美しい。見た目の美しさだけでなく使いご心地や丈夫で長持ちといった実用的な器、いわゆる『用の美』を追求してる陶芸家もいる。偶然出会った陶芸家と茶碗。大事に大事に使い続けるご飯茶碗も気がつけば10年。今では私の宝物である。話は変わるが、今年はデニムファッションが流行している。コロナ禍で家時間が長くなり、DIYや家庭菜園の作業着としてオーバーオールやジーパンが求められているそうだ。デニムの世界も『用の美』である。使えば使うほど味が出るものだ。使い捨てにしてゴミを増やせば環境は汚染される。リサイクル、リフォーム、リユース。もったいない精神を養いながら生活することで、人として大切な心のありように気づきが生まれ、成長へと導いてくれるやもしれない。